いつも通り書店を歩いていたある日、なぜか何度も視界に入る一冊があった。 『禁忌の子』——そのタイトルに漂う不穏さが気にかかりながら、どこか触れてはいけないような気がして、手が伸びずにいた。
そもそも私は、ミステリーというジャンルに苦手意識がある。 犯人探しや複雑な謎解きに、夢中になれた試しがない。だからこそ、この本にも距離を置いていたのだと思う。
それでも、ずっと気になっていた。何度も見かけ、知らず知らずのうちに頭の片隅に残る存在。 そしてある日、何の前触れもなく、手に取った。なんと二日で読破——気づけばページをめくる手が止まらなくなっていた。
物語は、ミステリーでありながら、それだけではなかった。 「禁忌」という重たい言葉が示すように、登場人物たちは皆、内側に何かを抱えている。沈黙や迷い、秘めた感情。真実は決して単色ではなく、読み進めるほどに色彩が重なり深まっていく。
巧みな構成に唸りながら読み進め、そして訪れた予想外の結末。思わず「えーー!」と声が漏れた瞬間、久しぶりに物語に心を揺さぶられる体験をした気がした。
さて、この『禁忌の子』の著者 山口美桜さんは、第34回鮎川哲也賞を受賞されており
現役の医師として働きながら執筆されたこの作品は、医療現場のリアリティと本格ミステリの緻密さが融合した、まさに“衝撃のデビュー作”と呼ぶにふさわしい一冊です。
次が待ち遠しい。